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診断士試験対策に簿記が必要無い理由

中小企業診断士試験では「財務会計を制する者は中小企業診断士試験を制する。」と言われます。

これは財務会計を苦手にする受験者の方が多いことに由来します。

一次試験7教科の中でも財務会計対策は特に時間がかかります。

全体では6割を超えていたのに財務会計で足切りになってしまった(40点未満科目があると他科目の点数にかかわらずi一次試験不合格となってしまいます。)、二次試験事例1~3までは合格ラインを超えていたのに、事例4(財務会計メインの科目)で全く歯が立たず涙を呑んでしまったという受験生の方が多くいます。

こういった情報を踏まえ、中小企業診断士試験を受験する前にまずは簿記の勉強をしてみようと考えられる方も多いと思います。

今回は中小企業診断士試験対策としての簿記の勉強について私の考えをお伝えさせて頂きます。

中小企業診断士試験のために簿記を勉強するのはやめよう

結論から申し上げると、財務会計、事例4の対策としてまず簿記を勉強するというのはやめましょう

理由1:問題の質が異なる

確かに財務会計、事例4と簿記とでは出題範囲が重なる点はありますし、過去に簿記の知識が無いと解答できない問題も出題されています。

ですが、そもそも財務会計、事例4と簿記とでは問題の質が大きく異なります。

簿記は読んで字のごとく日々の営業活動を帳【簿】に【記】すことです。

簿記の目的は正確な帳簿を作成し、決算日において損益計算書(P/Lといいます。)、貸借対照表(B/Sといいます。)を作成することにあります。

ですので、簿記試験はいかに正確に仕分けを行えるか、決算整理ができるか、P/L、B/Sが作成できるかということに重きが置かれています。

一方で、財務会計、事例4は、作成されたP/L、B/Sをもとに財務状況を分析し、どのような施策を採っていくべきか、当該施策によってどのような効果が想定されるかということに重きが置かれています。

簿記と財務会計、事例4とは似ているようですが、問われている内容の本質が異なるため、簿記の学習内容が財務会計、事例4に直結するとは限りません。

理由2:時間がもったいない

中小企業診断士試験に合格するためには1,000時間前後の学習時間が必要です。

中小企業診断士は3年以上かけて合格を目指す資格ではありません。

1~2年で合格するためには1分も時間を無駄にしてはいけません。

前述した簿記の知識が無いと解けない問題とは、簿記2級レベルの知識が求められる問題でした。

簿記3級に合格するためには50~80時間程度の時間が必要と言われます。

簿記2級の場合には200~300時間程度の時間が必要と言われます。

断言します。

200~300時間あれば財務会計は確実に仕上がります。(私の経験上は、200時間かければ6割は確実に取れますし、事例4にも対応できます。)

理由3:1、2問しか出題されない

簿記の知識が無いと解答できない問題というのは、通常、財務会計の第1問~第2問で出題されますが、出てもせいぜい2問です。出題されない年もあります。

2問というと8点ですので大きいように感じますが、中小企業診断士試験は6割以上取れば良い試験です。40点落としてもいい試験において、出題されるかどうか分からない8点のために300時間かける必要はありますか?言い方はあれですが、勘でも25%の確率で正解できます。)

簿記2級以上の知識が求められる問題であれば大半の受験生は解答できません。

中小企業診断士試験は100点を目指す試験ではなく、他の受験生が正答できている正答率60%以上の問題を確実に取っていく試です。

仮に簿記2級以上の知識が無いと解答できない問題が出題されたとしても、「きっと他の受験生も解けていない。」と開き直って潔く捨てましょう。(財務会計は第1問から解かないことが試験のコツです。これについては後日アップします。)

簿記の知識は無駄か

結論:無駄ではありません。むしろ強みです。

これまで簿記は不要ということを書いてきましたが、既に簿記2級以上を取得しているという方は大きなアドバンテージがあるということは間違いないと思います。

P/L、B/Sの分析がメインとはいえ、P/L、B/Sは簿記の知識の上に作成されるものですし、簿記で学習する売上原価の算定や原価計算は財務会計における超重要論点でもあります。

他の受験生が解けない問題を正答できる可能性も高まります。

財務会計、事例4を短期間で仕上げることができると思いますので、その分他の科目に時間を回すことができます。

私が言いたいのは簿記の知識が無駄ということではなく、中小企業診断士試験対策として簿記の学習をすることが無駄ということです。

時間がないからとりあえず簿記を勉強するという方へ

例えば、3月くらいに中小企業診断士受験を決めたものの、8月の一次試験まで時間が無いし、7科目仕上げるのは難しいので取りあえず簿記2、3級の勉強をして来年の一次試験を目指そうと考えている方へ。

簿記はやめて科目合格を目指しましょう。

中小企業診断士一次試験は科目合格の制度があります。(6割以上の得点ができた科目は翌年、翌々年の受験が免除される制度です。)

一次試験は一科目あたり100時間程度あれば6割以上取れます。

簿記対策をするのであれば、一科目でも良いので科目合格を目指しましょう。

中小企業診断士試験は二次試験からが本番です。

科目合格ができれば、翌年一次試験対策と並行して二次試験対策を行えるので圧倒的に有利です。

科目合格を目指すのであれば、二次試験との関連が薄い周辺4科目(経済学・統計学、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・政策)がおすすめです。(その中でも中小企業経営・政策は短時間で仕上げられるので特におすすめです。科目合格の是非については後日更新します。)

・簿記の知識があることは強み。

・ただし、中小企業診断士試験対策のために簿記を勉強するのはやめること。

・全教科を仕上げることは無理なら、科目合格狙おう。

参考になれば幸いです。

合格を祈念しております。試験勉強頑張ってください!