簡易組織再編 略式組織再編

【経営法務】簡易組織再編・略式組織再編の覚え方

暗記が中心となる経営法務
その中でも簡易組織再編、略式組織再編は、適用できるケースとできないケースや譲受会社、消滅会社等々複数のパターンが出てくるため覚えるのがとても大変です。

今回は私が受験生時代に使っていた覚え方のテクニックを解説します。

※機関設計の覚え方についてはこちらをご覧になってください。

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機関設計の覚え方

簡易組織再編の覚え方

原則、組織再編(合併、分割、株式交換、株式移転)を行う際には、株主総会の特別決議が必要ですが、一定の要件を満たす場合には特別決議を省略することができ、これを簡易組織再編と呼びます。
※全部譲渡は組織再編行為ではありませんが、一定の要件を満たせば特別決議を省略できるという点では同じですので、セットで覚えてしまいましょう。

文字ではなく記号で覚える

・「吸収合併の場合で吸収合併承継会社に資産の帳簿価格の合計額が…」と文字で覚えていってもなかなか頭に入ってこないと思います。

・簡易組織再編の暗記のコツは文字ではなく記号で覚えることです。

step1 記号の並びを覚えよう

・まずは以下の記号の並びを覚えてください。

簡易組織再編 覚え方

 

ポイントは左から右に向かってリズムで覚えることです。
「バツマル、バツマルバツバツ、ホシマルホシバツ、バツマルバツバツ」
と口ずさみながら、3回くらい書いてみてください。
すぐ覚えられると思います。

step2 配置の意味を覚えよう

・先ほどの記号の並びを覚えたら、次に配置の意味を覚えます。

①組織再編の種類

・まずは組織再編の種類です。

・この表は上から順に「全部譲渡」「合併」「分割」「(株式)交換・移転」という順番に並んでいます。

組織再編 覚え方[2]

これもリズムで覚えてしまいましょう。
「ジョウトガッペイ、ブンカツコウカンイテン」
です。

②新設か既設か

・右端は新設会社、それ以外は既設会社です。

簡易組織再編 暗記法

③譲る方と貰う方

・正確には事業譲渡の場合には譲渡会社と譲受会社、合併の場合には消滅会社と承継会社等、組織再編の種類によって名称は変わりますが、覚えきれないので、「左サイドは譲る方、右サイドは貰う方」と覚えてしまいましょう。

組織再編 記憶法[1]

④①~③を重ねる

・①~③を重ねると以下の通りです。

簡易組織再編 まとめ[4]

step3 記号の意味を覚えよう

・最後に記号の意味を覚えましょう。

・×:簡易組織再編が認められない
・〇:簡易組織再編が認められる(資産の5分の1)
・★:簡易組織再編が認められる(資産の5分の1)
ポイントは、「純」資産と、「総」資産の区別をしっかりとすることです。
しっくりこなければ「〇」の代わりに「J(ジュンシサンのJ)」、「★」の代わりに「S(ソウシサンのS)」を使っても良いと思います。
以上です。

組織再編や会社の名称は覚えなくて良い

・念の為、組織再編や会社の名称を記載した一覧を載せておきますが、試験対策上はこれらの名前は覚えなくて大丈夫です。

・これらの名称をダイレクトに問われる問題は出題されませんし、step2で覚えた通り、①組織再編の種類、②新設会社か既設会社か③譲る方か貰う方かというイメージがあれば、設問文を読んでどれを指しているのかということが感覚的に理解できます。

組織再編 一覧[1]

例えば、
「新設合併承継会社」とあれば、合併(2段目)で新設(右端)の貰う方(右サイド)=認められない
「吸収分割会社」とあれば、分割(3段目)で既設の譲る方(左サイド)=認められる
というように分かりますよね。

略式組織再編の覚え方

・略式組織再編の覚え方は簡単です。

・図や表は必要ありません。

原則、組織再編(合併、分割、株式交換、株式移転)を行う際には、株主総会の特別決議が必要ですが、特別支配会社(総議決権の10分の9以上を保有している親会社)の子会社の特別決議は省略できます。

略式組織再編は意味で覚える

・略式組織再編は制度が設けられている意味を理解すれば簡単です。

【略式組織再編が制度として設けられている意味】
・A社がB社の10分の9以上の議決権を保有しているとします。
・A社がB社と合併や分割を行いたいと考えた時、B社で株主総会の手続きをしてもまず間違いなく承認されますよね。(合併や分割をしたいA社が議決権の9割を保有している訳ですから。)つまり、B社で株主総会を開いても開かなくても結果は変わらないので、手間だから省略できるのが略式組織再編です。
子会社で株主総会を開いても開かなくても結果が一緒だからというところがポイントです。
・純資産の5分の1を超える資産を引き継ぐのであれば親会社での特別決議は必要になりますし、親子関係になっていない場合(新設合併、新設分割、株式移転)には、略式組織再編は使えません。

例題

平成30年度の経営法務で簡易組織再編、略式組織再編に関する問題が出題されていますので、今回の内容で解けるか確認しておきましょう。

例題 平成30年度 経営法務 第2問
※空欄A~Dに入る組み合わせを選ぶ問題です。
平成30年度 経営法務 第2問[1][選択肢]
ア A:〇 B:× C:× D:〇
イ A:〇 B:× C:× D:×
ウ A:× B:〇 C:〇 D:〇
エ A:× B:〇 C:〇 D:×
選択肢毎に見ていきましょう。
実際に解く際には、略式組織再編の図を書いておいてくださいね。

A 吸収合併消滅会社の簡易手続

・吸収合併ですので既設の2段目、消滅ですので譲る方(左サイド):×ですね。

B 吸収合併消滅会社の略式手続

・新設ではない(既設)会社ですので、仮に親会社が特別支配会社であれば略式手続きを使えます:〇です。

C 新設分割会社の簡易手続

・分割なので3段目、新設ですので右端です。分割会社というのは承継会社ではない方、つまり譲る方(左サイド)ですので:★です。(解答上は〇)

D 新設分割会社の略式手続

・新設ということは親子関係が無い状態ですので、略式手続は使えません:×です。

ということで、解答はエになります。

いかがでしょうか?

苦痛でしかなかった組織再編の問題が取り組みやすくなったような気がしませんか?

最後に

・今回解説した簡易組織再編、略式組織再編に関する内容は、あくまでも診断士試験の経営法務に対応するための知識です。

・色々と例外事項(略式組織再編の場合で対価の一部が譲渡制限株式の時は特別決議もしくは特殊決議が必要等)はありますし、会社法の解釈としては解説が間違っている箇所もあるかもしれません。

・ですが、もはやそれらの知識は法律の専門家の領域の話です。
・診断士は法律の専門家ではありません。
・診断士は経営の専門家であり、経営法務の位置付けも、法律の専門家に橋渡しが出来る一次的な知識があるかどうかです。
簡易組織再編、略式組織再編についてはこれ以上深入りする必要はありません。
・これ以上の知識が求められている年度もありますが、殆んどの受験生が解けていませんし、合否に影響を与えません。何よりも、そこまでカバーしようとするとコスパが悪すぎます。
経営法務は「いかに深入りせずに、手間なく6割を取れるか」が学習のポイントです。
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以上、参考になれば幸いです。