令和元年度(2019年度)中小企業診断士二次試験【事例1】解説(解答例付)
・この記事では令和元年度(2019年度)【事例1】を解説していきます。
・与件文、解答用紙については各予備校の公式サイトからダウンロードしてください。
・AASは平成13年度以降全ての与件文、解答用紙が用意されているのでお勧めです。
令和元年度(2019年度)【事例1】の特徴
【出題内容】
設問 | 出題内容 | 難易度 |
第1問 | 外部、内部環境分析 | ★ |
第2問 | 内部環境分析 | ★ |
第3問 | 経営戦略 | ★★ |
第4問 | 人事戦略 | ★★ |
第5問 | 組織戦略 | ★ |
(難易度目安)
★:解答し易い
★★:合否を分ける設問
★★★:難易度が高く、合否に差が付かない設問
【与件文の量】
やや多い(約3ページ)
【解答文字数】
例年通り(500字)
【配点・出題数】
例年通り(20点×5問)
【難易度】
例年通り
基本的には例年通りの内容
・題意が分からず解答が困難という設問もありません。
・強いて言えば、①第1問の題意を汲み取れたか、②第3問で事例2(マーケティング)寄りな解答にならなかったか、③第4問を人事戦略の問題と捉えられたかということがポイントだったと思われます。
・設問構造の理解と「外部環境の変化に対応できずに苦境に陥ったA社がそこから脱却するために、人事・組織戦略を展開していく」というストーリーを意識できれば解答を作り易かったのではないでしょうか。
・いずれも過去に出題された論点ですので、どれだけ過去問と向き合えていたかということが合否に繋がったと思われます。
「最大の理由」
・令和元年度事例1では「最大の理由」を問われる問題が2題出題されています。
・今までには無い出題方法です。
・「最大の理由」と問われている以上、解答の仕方は「理由は~である。」になりますが、これだけでは解答文字数を満たせませんし、1つの論点しか記述できません。
・「理由は~である。具体的には①~、②~である。」というような記述力が求められたと思いますが、「最大の理由は何か」と問われていなかったとしても、真因を解答し、具体例を記載するというのはオーソドックスな解答方法ですので、現場対応できない内容では無かったと思います。
・今後も「最大の理由」が問われる可能性はありますが、基本的にはまず最初に真因を記載し、具体例を記述することでMECEな解答を作成する。という方針で問題無いと思われます。
経営診断のプロセスの1つとして「真因」を探すという取り組みがあります 真因は、真の原因・診断先企業は様々な問題を抱えています。※問題と課題の使い分けは大丈夫ですね?問題は顕在化しているネガティブな事象です。[…]
事例2に類似した出題内容
・第3問で自社の公式サイトについての言及があります。
・今まで事例1で自社の公式サイトについて問われたことはありません。
・マーケティングの内容を解答してしまいそうになりますが、あくまでも事例1ですので組織・人事の面から考えていく必要があります。設問文にわざわざ「自社製品やサービスの宣伝効果など公式サイトに期待する目的・機能とは異なる」と書いてあるのは、制約条件としてマーケティングの視点の解答は求めていないということを示唆していると思われます。
以前、「合格答案を作るためには、「一貫性」「合理性」「明瞭性」「具体性」を満たした解答を作ることが重要である。」と解説しました。[sitecard subtitle=関連記事 url=https://consul-circle.com/[…]
第1問
・成功しなかった理由が、①衰退期にあり縮小しつつある市場をターゲットとしたこと、②高コスト体質であることは与件文から読み取れると思います。
・通常の設問であれば、この2つを列記すれば解答になりますが、今回は「最大の理由」を問われていますので、真因を1つ解答する必要があります。
・ここで、第2問を確認すると高コスト体質を引き起こした原因がA社の企業風土であることが分かります。また、第3問で経営戦略について問われています。これらを総合して考えると、第1問で解答すべき「最大の理由=真因」は、A社の企業風土によって引き起こされたA社のこれまでの経営戦略であると考えられます。つまり、現状維持的な企業風土のせいで、外部環境が変化しているにも関わらず、それを考慮せず既存の戦略に基づいて事業化をしたことが「最大の理由」です。
解答例
第2問
・第2問は、冒頭に記載した通り、「外部環境の変化に適応できなくて苦境に陥っている」ということを意識できれば解答し易いと思います。
・与件文の記述を上手く使いながら解答を作り上げましょう。
・ある程度与件文の抜き出しで対応できる設問ですので、絶対に落とせません。
解答例
第3問
・第3問のポイントは、経営戦略の問題として捉えることができたか、ということです。
・この設問をマーケティングの問題として捉えてしまうと全体としての一貫性が失われ、説得力が無い解答になってしまいます。
①第1問、第2問で指摘した外部環境への適応の必要性、現状維持志向の企業風土からの脱却の重要性
②与件文第5段落の「時代にあった企業として再生していくことを目的に」という文章
③コアテクノロジーの明確化→自社公式サイトの活用→第4問で実施した人事戦略→新規事業の基盤の固まりという時系列
④第9段落の「営業部隊のプレゼンテーションが功を奏したことは否めない事実」という文章
⑤事例1は組織・人事について解答する試験であること
・上記を考慮すると、「経営革新を行う為には、組織・人事戦略の実行が不可欠であり、試験乾燥サービスによる潜在顧客との接触を通じ、それに適応する組織戦略、人事戦略を実行することができた。」というのが解答の方向性です。
解答例
第4問
・第4問のポイントは、人事戦略の問題として捉えることができたか、ということです。
・設問構造を意識していないと気付きづらかったかも知れませんが、営業社員が新規事業の拡大に積極的に取り組むようになった要因は、一言で言えば「やる気が上がったから(モラールが向上したから)」です。
・A社長は、事業領域を明確にし、過去の営業体質から脱却するために何らかの人事戦略を行っています。それは何かを問われているのがこの設問です。
・A社が実施した人事戦略は何かという視点で与件文を見ていくと、第6段落にリストラに関する記述と賞与(適切な報酬)に関する記述があり、第7段落でトップによる社員へのビジョンの共有についての記述があります。これらを纏めれば解答になります。
解答例
第5問
組織は戦略に従う
・チャンドラーの言葉ですが、診断士二次試験、特に事例1において非常に重要な考え方です。
・事例1の基本的な考え方は、環境分析を行い、自社の強みを見つけた上で、経営戦略を策定し、それにマッチした組織戦略、人事戦略を実行するということです。
・似たような言葉でアンゾフの「戦略は組織に従う」がありますが、試験対策上は全く逆の発想です。
・事例1に登場する殆どの企業は戦略が組織に従っている状態にあります。つまり、今回のA社のように、過去の組織体制や組織文化のまま外部環境の変化に気付かず、苦境に陥っている企業が殆どです。苦境から脱出する為に診断士に相談してきたA社に対し、環境分析を行い経営戦略を作成した上で、適切な組織再編の助言を行うことが診断士として求められているスキル=解答です。
・今回の事例では診断士は組織再編を見送る助言をしています。組織再編を見送る「最大の理由」は「これから実行していこうとする経営戦略においては現状の機能別組織が適しているから(変えない方が良いから)」に他なりません。ここに、機能別組織のメリットといった一次知識や、与件文から読み取れる親族経営等の内容を加えていけば解答は作れます。
・親族経営については、解答例には盛り込みましたが、親族経営のメリット、デメリットへの言及が与件文上無いため、優先度は低いです。
・第1問同様「最大の理由」を問われていますので、まずは理由を端的に書いてそこに根拠を付け加えるという記述が必要です。
解答例
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