令和元年度(2019年度)中小企業診断士二次試験【事例2】解説(解答例付)
・この記事では令和元年度(2019年度)【事例2】を解説していきます。
・与件文、解答用紙については、各予備校の公式サイトからダウンロードしてください。
・AASは平成13年度以降全ての与件文、解答用紙が用意されているのでお勧めです。
令和元年度(2019年度)【事例2】の特徴
【出題内容】
設問 | 出題内容 | 難易度 |
第1問 | SWOT分析 | ★★ |
第2問 | プロモーション戦略 | ★ |
第3問(設問1) | ターゲティング戦略 | ★ |
第3問(設問2) | プロモーション戦略 | ★ |
(難易度目安)
★:解答し易い
★★:合否を分ける設問
★★★:難易度が高く、合否に差が付かない設問
【与件文の量】
例年通り(約3ページ+図表1ページ)
【解答文字数】
少ない(460字)
【配点・出題数】
出題数が少なく、各問題の配点が大きい
【難易度】
例年通り
実力差が如実に表れる良問
・設問構造は第1問でSWOT分析を行い、第2問以降で機能別戦略を解答するという例年通りの形式です。
・与件文の量に関しては、約3ページ+図表1ページと他の事例と比べると多めの情報量ですが、事例2に限定すれば、例年通りの量です。
一貫性の確保
・今回の事例のポイントは「一貫性の確保」です。
・詳しくは下の記事で説明していますが、二次試験の解答は、解答全体で1つの診断報告書を構成しています。
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・診断報告書は、SWOT分析をした結果に基づき、機能別戦略を提案していきます。
・第2問以降で解答すべき内容は、SWOT分析に基づいて構成されている必要があります。つまり、第1問で触れていないB社の強みや機会に基づいて第2問以降の解答をした場合、全体としての一貫性が失われてしまい、低い評価になってしまう可能性が高いです。
図表の読み取り
・令和元年度の事例2では図表が1ページ与えられています。
・平成25年度以降、毎年図表が与えられていますので、事例2では確実に図表が出題されるという前提で対策を行うべきです。
図表読み取りのポイント
・図表を読み取る際、ポイントとなるのは、①必要以上に時間を掛けないこと、②必要以上に分析をしないことです。
・図表はあくまでも与件文の参考資料です。
・今回の事例で言えば、図1からはX市は10~20歳、40~50歳の人口構成比が多い、図2からは客単価を上げる為にはいかにオプションを付けるかが重要となるという情報が読み取れれば十分です(10~20歳に対しネイルの提案というのは常識的に想定しづらく、ターゲットは40~50歳になります)。
第1問
・今回の事例2では、第1問が合否を分けるポイントになっています。
・冒頭にも記載しましたが、第1問のSWOTは、第1問単独で考えるのではなく、第2問以降の解答との一貫性を意識して解答する必要があります。
・いきなり解答を書き出すのではなく、まずは問題用紙の余白で解答骨子を作り、全体の一貫性を確認した上で解答を書き出すという基本的な解答プロセスが重要です。
二次試験は4事例全て制限時間80分です。80分という限られた時間の中で合格答案を作り上げるために何をすべきなのか。今回は試験時間80分の使い方について解説していきます。今回解説するのは、事例1~3についてです。事例4は例[…]
S(強み)について
・技術力、提案力が高いということに加えて、第3問で商店街との協業を行う方向性が記載されていることを考慮すると、商店街と良好な関係があるというのは入れておくべきです。
・行事が盛んな土地柄に立地しているということは、第3問(設問2)の解答方針次第で強みと捉えてしまいそうですが、B社特有の強みでは無く(競合他社も容易に真似できる)解答文字数を考慮すると記載すべき内容ではありません。
・同様に、店舗が落ち着く雰囲気ということも、B社特有の強みではありませんし、他の設問との関連を考慮すると(店舗が落ち着くということをベースに解答を組み立てる問題が無い)、優先度は低いです。
強みは容易に手に入れられないものを選ぶこと二次試験の基本的な解答の方向性は事例企業の強みを活かして、機会を掴み、脅威を回避する提案を行うことです。事例企業の強みは一つでは無く、与件文から複数読み取れることが多く、どの強みを骨子に[…]
W(弱み)について
・第2問で客単価を上げる方法が問われていることを考慮すると、収益性が低いということは触れておくべきです。
・また、B社の顧客の半数は近さ重視の顧客であり、大手チェーンの出店により顧客が大量に流出する可能性があるという与件文の内容から、顧客のロイヤルティが低いということにも触れておくべきです。
O(機会)について
・第4段落のSNS上の写真を持参する顧客が増えているという記載、第6段落のSNSを通じて固定客が増えたという成功体験、第2問との関連を考慮すると、画像が送信でき、マーケティングに活用可能なSNSやインスタント・メッセンジャーの普及ということがO(機会)として捉えられます。
・一定の市場規模があることについては、解答の優先度は低いです。問題にわざわざ「2019年10月末時点の」と書いてあり、近年では市場の成長は鈍化傾向ですので、むしろT(脅威)に該当する内容です。このような状況だからこそ、顧客を固定客化し、客単価を上げていくストーリーが展開されています。
・インスタント・メッセンジャーというキーワードは、それだけで14文字も消費してしまいますので、解答例ではSNS等としています(「SNS」は文字数を1文字稼げるので、半角で解答すべきです。)。
T(脅威)について
・これは素直に競合他社の存在を解答すれば良いと思います。
解答例
①技術力、提案力が高いこと、②商店街の他店と友好な関係が構築できていることである。(41字)
①収益性が低いこと、②固定客の半数は立地重視で、ロイヤルティが低いことである。(39字)
顧客への情報発信や技術力の訴求、宣伝を画像で行うことが可能なSNS等の普及である。(38字)
・T(脅威)
自宅サロンや大手チェーン等競合の存在、モール内への低価格ネイルサロンの出店である。(41字)
第2問
・図2を見れば、客単価を高めるためには、いかにオプションを追加してもらうかが重要なのは明らかです。
・第6段落に3週間~1ヶ月の間隔での来店が必要になると記載されていますので、次回来店が必要なタイミングで、その時々のイベントに合ったオプションメニューのデザインの案内を行うというのが解答の方向性です。
・第1問のO(機会)として画像を送れるようになったということを解答していますので、一貫性を保つため、画像を発信する。ということは触れておきたいです。
解答例
第3問(設問1)
・協業相手の候補としては、小型百貨店、有名ブランドの衣料品店、宝飾店、飲食店、生鮮品店、食料品店、雑貨店、美容室、貸衣裳チェーン店等多数読み取れますが、与件文から合理的に想定でき、他の解答との一貫性が保たれていれば、選んだ業種自体は評価に影響しないと思います。
・但し、B社の強みである提案力を活かす為に、衣料品店や宝飾店、美容室、貸衣裳チェーン等のファッション関連の業種と協業し、(設問2)で季節のイベントに応じたトータルコーディネートを提案する。というのが最も解答し易く、多い解答ではないかと思います。
・ターゲットは、与件文の内容や図1を素直に読み取れば、人口構成比が多い40代の女性です。
解答例
第3問(設問2)
・第6段落に①リピートを増やす為には固定客が重要であること、②「特に初来店の際に、顧客の要望に合ったデザイン、もしくは顧客の期待以上のデザインを提案し、そのデザインに対する評価が高ければ、固定化につながる例も多い。」とありますので、この内容を素直に活かすべきです。
解答例
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