平成30年度事例3再現答案

【事例3】平成30年度 71点の再現答案(解説付)

・私が受験した平成30年度事例3の再現答案を掲載します。
・得点開示請求の結果、実際の得点は71点でした。
・二次試験の解法のポイントを解説していますので、実際の試験問題でどのように活用するか参考にしてください。

※こちらの記事も参考にしてください。

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80分の使い方

 

設問の確認(約10分)

・まず最初にすべきことは設問の確認です。

・設問を読み進めながら、①配点の確認、②設問要求の確認、③解答文字数の確認、④設問構造の確認を行います。

配点の確認

・大問5つ、配点は各20点と変わりませんので、全て同じ熱量で取り組みます。

設問要求の確認

・第1問から順番に設問要求の内容を確認していきます。

設問要求=問いかけ+制約条件です。

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設問要求
後でミスをしないように問いかけは四角で囲み、制約条件には下線を引いておきます。

第1問

第1問(配点20点)
顧客企業の生産工場の海外移転などの経営環境にあっても、C社の業績は維持されてきた。その理由を80字以内で述べよ。

・「顧客企業の生産工場の海外移転などの経営環境=脅威」です。

・脅威がある中でC社は業績を維持できた理由は何らかの強みがあったから、つまりSWOTの分析です。

・事例3に限らず、第1問は事例企業のSWOTを行う問題が多いです。
・SWOTを解答する際に重要なのは、単に強み弱みを書き出すのでは無く、第1問で指摘した強み、弱みの論点を後の設問で使うことを意識することです。
・後の設問で強みは必ず活かしますし、弱みは必ず解決します。
・二次試験では、時系列を意識することが重要です。
・過去の強みが現在も強みとして維持されているとは限りませんし、事業を続ける中で後天的に強みを獲得している場合もあります。
・第1問では「顧客企業の生産工場の海外移転などの経営環境にあっても」という制約条件がありますので、経営環境の変化が起きた時点で獲得していた強みを解答する必要があります。

第2問

第2問(配点20点)
C社の成型加工課の成型加工にかかわる作業内容(図2)を分析し、作業方法に関する問題点とその改善策を120字以内で述べよ。

・事例2、事例3を中心に与件文に加えて図表が与えられるケースが増えています。
・図表が与えられた際の重要なポイントは図表はあくまでも与件文の補足資料という意識です。
・図表で表されている問題や環境変化は必ず与件文に記述があります。
・図表解析に時間を掛けすぎないようにしましょう。

第3問

第3問(配点20点)
C社の生産計画策定方法と製品在庫数量の推移(図1)を分析して、C社の生産計画上の問題点とその改善策を120字以内で述べよ。

・第2問と同様、図表分析が求められていますが、意識するのはあくまでも与件文です。

・第2問と似た設問文です。
・第2問では「作業方法に関する問題点」を問われていましたが、第3問では「生産計画上の問題点」を問われていますので、解答が重複しないように意識する必要があります。

第4問

第4問(配点20点)
C社が検討している生産管理のコンピュータ化を進めるために、事前に整備しておくべき内容を120字以内で述べよ。

・事例3ではIT化に関する問題が頻出されます。
IT化の問題は①ITそのものに関する知識問題と②IT化するために必要な情報を解答する問題の2パターンに分類されますが、今回の問題は②の必要な情報を解答するパターンです。
※IT化問題への対応については、後日改めて解答します。
・「必要な情報」という問いかけではなく、「整備しておくべき内容」という問いかけですので、IT化に必要な情報を解答するだけではなく、金型や製品コードの配番や5Sの徹底といった、日常業務レベルでの改善策も求められていると思われます。

第5問

第5問(配点20点)
わが国中小製造業の経営が厳しさを増す中で、C社が立地環境や経営資源を生かして付加価値を高めるための今後の戦略について、中小企業診断士として120字以内で助言せよ。

・戦略を問われた場合には、エーベルの3次元、つまり顧客層(誰に)、顧客機能(何を)、技術(どのように)の切り口を意識すると解答が構成しやすくなります。
・特に技術(どのように)は、事例企業の強みを活用することを意識することが重要です。
・事例3では初めてですが、その他の事例では「中小企業診断士として助言せよ」という設問要求がまれにあります。
・中小企業診断士は単に現状を分析するだけではなく、未来を語り経営者を動かすことが重要です。
・経営者を動かすためには、単に改善策を伝えるだけではなく、その結果どうなるかを伝えることが重要です。
・つまり、「中小企業診断士として助言せよ」という設問の場合には、事例企業のあるべき姿、将来像をより強く意識して解答することが重要です。

解答文字数の確認

・解答文字数は合計で560字です。

・例年通りの文字数ですので、特に与件文を読む時間や書く時間に充てる時間の調整はしません。

設問構造の確認

・設問構造を確認しておきます。

・第1問はSWOT、特に強みを抽出させる問題です。

・第2問、第3問は弱みの解決です。

・第4問はIT化対応ですが、第1問の強みを活かすために活用するのか、第2問、第3問の弱みを解決するために活用するのかは与件文を読まないと分かりません。

・第5問は経営戦略問題です。

・過去問と同じようなオーソドックスな設問構造だと思われます。

 

与件文の確認(約40分)

・ここから与件文の確認に入ります。

設問を確認した際のチェックポイントを意識しながら読み進めていくことが重要です。

与件文の長さ

・与件文を確認すると本文だけで3ページ、図表を合わせると合計4ページあります。

・これは過去問と比べてもかなりボリュームが多いです。

・タイムマネジメントをしっかりと意識しながら取り組みます。

与件文のチェックポイント

・段落毎にチェックすべきポイントを解説していきます。

第1段落

・会社組織は総務部、製造部で構成

・今年度の事例3では解答に関係しませんでしたが、「営業体制が整備されておらず営業力が弱い」という弱みは頻出です。
・その場合には営業担当の専任やITの活用によって営業力を強化する提案が求められます。

第3段落

・工業団地に移転
・関連企業が多く立地

・工業団地のように複数の中小企業が集積しているということは強みになりやすいです。
・自社単独では無理でも、他の中小企業と連携することにより、新製品を開発したり、共同受注や共同発注によってコスト削減を図る解答の方向性が考えられます。

第5段落

・金型の設計・製作から成型加工まで対応できる体制を社内に構築
・加工技術力の強化
・コスト低減のノウハウ

・一貫生産体制、高い加工技術力、ノウハウは第1問の強みになりそうです。

特にノウハウは今後の戦略を提案する第5問でも重要な要素になりそうです。

・設計→加工→納品までの工程を自社で完結できる体制のことを一貫生産体制と言います。
・事例3において社内に一貫生産体制があるということは強みです。
・外注を利用しないことによりコストを削減できることや、それぞれの工程でノウハウを蓄積できるというメリットがあります。
・二次試験共通の考え方ですが、ノウハウは強みになることが多いです。
・強みはVRIOの視点で考えていくことが重要ですが、設備のように資金を使えば容易に導入できる固定資産に比べて、ノウハウのような無形の資産はImitiability(模倣困難性)が高く、他社と差別化可能な要素になりやすいです。

第6段落

・工業団地では技術交流会、共同受注、共同開発が実施されている。
・工業団地内での助け合いにより、経営難を乗り越えてきた。

・第1問の強みに加えて、「立地環境」を生かしてと問わていることを考慮すると、第5問の解答でも使いそうな内容です。

「経営難を乗り越えてきた。」と明確に書いてありますので、ここは第1問で確実に触れるべきです。時制も第1問の設問要求と合致します。

第7段落

・近年、国内回帰の動きがある。
・C社の受注量は回復していない。

・段落の冒頭が、「近年、」や「最近、」「近頃、」といったように時制が変わる文章から始まっている場合はこれまでの流れから内容が一気に変わる合図です。
・通常はこの後に機会や脅威といった外部環境の変化が記述されています。
・これは事例3の特徴ですが、「~していない。」「~できていない。」というような否定形で終わる文章は解答のヒントです。
・していないのであればする。できていないのであれば出来るようにする。というのが解答の方向性です。
・この段落では「受注が戻っていない。」とありますので、改善策を実施して、「受注量を回復する。」というのが解答の方向性です。

第8段落

・成形技術を習得し、受注に成功した。
・工程数や納期の短縮、コスト削減が可能になる。

・「受注に成功した。」「顧客から喜びの声が聞かれた。」というような成功体験は、事例企業の今後の方向性を示唆しています。
成功体験をより広範な範囲に実施していくことにより、他社と差別化を図ることができます

第10段落

・生産ロットは成形機の段取り時間を考慮して決定している。
・生産効率重視で受注よりも大きいロットサイズで計画している。
・在庫管理に苦慮している。

・これは明らかに第3問で解答すべき内容です。

・適切なロットサイズの決定というのが解答の方向性になります。

・このように事例3は問題や課題が明記されていることが多く、解決策=解答ということになります。
・解決策は一次知識を活用するとともに、多くの過去問検討を行い、解決策のストックを増やすことが重要です。

第11段落

・作業者1人が2台の成型機を担当。
・成形機は自動運転、自動停止。

・こちらは第2問で解答すべき内容です。

・自動運転、自動停止というキーワードから運転、停止中に作業員が手待ちになっているのでは?というあたりが付けられます。

第13段落

・段取り時間が長時間になっている理由。
・置き場が混乱。
・識別コードが無い。
・納品位置が変わる。

・第2問で解答すべき内容と、第4問で解答すべき内容が混在しています。

・与件文の内容から5Sというキーワードは想起したいところです。

第14段落

・短納期化、小ロット化、多品種少量化の要望が増加している。
・段取り時間の短縮化の改善により対応することが会社方針。

・特に事例2、事例3で頻出なのが「顧客の要望」です。
・二次試験では顧客の要望=ニーズには全力で応えるというのが鉄則です。
※詳細については後日解説します。
・事例企業の方針や社長の想いが与件文に記載されている時は要注意です。
・基本的にこれらを否定する解答はNGです。
方針や想いを達成するために具体的に何をすべきかを助言するのが、二次試験のセオリーです。
※詳細については後日解説します。

第15段落

・生産管理のコンピュータ化を進める予定。
・データベース化を検討中。

・第4問で解答すべき内容です。

図表1

・最後に図表について確認しておきます。

・図表はあくまでも与件文の参考資料に過ぎませんので、ここであまり時間を掛けないように注意が必要です。

・図表1は第10段落の在庫管理、第3問の生産計画上の問題点に紐づいていますが、注目すべき箇所は7月10日と19日の数量です。

・製品Aの納品指定数は600個前後ですが、10日は5,000個超と9倍近くの在庫があることになり、明らかに過剰在庫ですし、19日は1,000個と欠品の恐れがある状況です。

・在庫管理を行い、適切な生産計画を立てるというのが第3問の解答の方向性になります。

図表2

・図表2は第11段落、第13段落、第2問の作業方法に関する問題点に紐づいています。

・パッと見て気になるのは、①待ちの時間が異常に多いことと、②詳細を抜き出したグラフの中の移動時間の多さです。

極端な箇所は出題者からのメッセージです。

・待ち時間と移動時間を減らすこと、自動運転のメリットを活かすことが第2問の解答の方向性になります。

図表分析のポイントは極端な箇所を探すことです。
・繰り返しになりますが、図表はあくまでも与件文の参考資料ですので、細かな数字を読み取ったり、計算をして分析をしたりということは求められていません。
・80分という時間の中で詳細な分析をすることは不可能ですし、出題者もそこまでは求めていませんので、注目してほしい点が極端な数値として表されています。

目指すべき方向性を検討する

・解答の一貫性を確保するために、目指すべき方向性を確認しておきます。

・顧客企業の海外移転という脅威の中でも高い技術力と、蓄積したノウハウ、工業団地内での連携により経営難を乗り越えてきたC社。

・顧客企業の国内回帰傾向という機会を捉え、受注量を回復していくために、強みの強化と弱みである作業効率の改善と在庫管理の見直しをITを活用しながら行っていくという方向性です。

 

私の再現答案

・最後に私の再現答案を掲載しておきます。

・二次試験は全科目100点満点ですが、記述式、相対評価であることを考慮すると、事例4を除いて80点以上の高得点を狙いに行くことは不可能です。

・いかに安定して70点前後の得点を取れるかということが合否を分けます。

・得点開示請求の結果は71点ですので、80分という時間の中で、この再現答案レベルの解答を安定して作り上げることができるということを目標に学習に取り組んでください。

第1問

理由は、①金型内製化による一貫生産体制の構築や加工技術力の強化を通じたコスト低減ノウハウの蓄積、②工業団地内の技術交流会や共同受注・開発等の協力関係の構築である。(80字)
・②は与件文で明示されており、必須の項目ですが、それに加えて第5問の戦略を解答する際に強みであるノウハウを使うべきであると考えたため、第1問の解答で触れました。

第2問

問題点は、①作業者、成型機の待ち時間が多いこと、②金型や材料の移動時間が多く、段取り作業に要する時間が長いことである。改善策は、①成型機1稼働中に成型機2の段取り作業を実施する等、加工順序の変更による待ち時間の削減、②5Sの徹底である。(117字)
・与件文と図表から読み取れる問題点とその改善策を素直に解答しています。
設問の問いかけが「問題点」と「改善策」ですので、大体同じくらいの文字数になることを意識して解答しています。
・5Sについてはもう少し具体的に書きたかったのですが、解答文字数の制限上書ききれませんでした。
・5Sに関しては、第2問で使うべきか第4問で使うべきか迷ったのですが、判断しきれなかったため、両方の解答で使うことにしました。
・今回の5Sのように、どちらの設問で解答すべきか悩むことがあると思います。
・時間内で明確に判断することが出来ない場合には、両方の解答に盛り込むことをお勧めします。
・両方書いてあるから減点ということは無いと思いますし、どちらか一方のみに書いた場合、最悪加点0点ということがあり得ますが、両方書いておけば評価は低いものの、加点を貰えます。

第3問

問題点は、効率重視の生産ロットサイズにより、欠品の恐れや過剰在庫が発生していることである。改善策は、①現品管理を行い、受注量と在庫水準に応じた生産ロットサイズとすること、②設備稼働状況や受注状況に応じて柔軟に生産計画を変更することである。(119字)
・基本的なプロセスは第2問と同じです。
・生産計画の策定頻度を見直すという論点を盛り込むべきか迷ったのですが、解答文字数の都合上、適宜変更するという論点を優先しました。

第4問

事前に整備しておくべき内容は、①支給品も含めた金型や材料の統一した識別コードを作成すること、②金型の保管場所や材料の納品場所を明確にし、保管した棚番と識別コードと紐づけること、③5Sを徹底し、段取り時間を短縮することである。(111字)
・与件文から読み取れる問題点とその改善策を素直に解答しています。

第5問

戦略は、国内回帰傾向の顧客に対し、C社が持つインサート成形などの高い技術力とコスト削減、工程数、納期短縮のノウハウを活用した提案を、工業団地内の電気・電子部品関連中小企業と連携して行うことで、他社と差別化を図り、受注量を増加させることである。(120字)
・戦略問題であることから、誰に、何を、どのようにを意識して解答を構成しています。
・第7段落で受注量が回復していないと記述されていること、設問要求に「中小企業診断士として助言せよ。」とあることから将来像=受注量が増加することを意識して解答しています。
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