平成21年度事例4

中小企業診断士二次試験平成21年度【事例4】をできるだけ丁寧に解説(解答例付)

中小企業診断士二次試験平成21年度【事例4】をできるだけ丁寧に解説(解答例付)

・この記事では平成21年度【事例4】をできるだけ丁寧に解説していきます。

・与件文、解答用紙については各予備校のHPからダウンロードしてください。

AASは平成13年度以降の全ての与件文、解答用紙が用意されているのでお勧めです。

平成21年度【事例4】の特徴

【出題内容】

設問出題内容難易度
第1問経営分析
第2問(設問1)確率
第2問(設問2)財務レバレッジ★★★
第3問(設問1)CVP分析、予想P/L
第3問(設問2)CVP分析、営業レバレッジ★~★★★
第4問(設問1)為替損益
第4問(設問2)オプション取引

【難易度目安】
★:確実に正解できなければいけない設問
★★:合格者は正答する設問(合否を分ける設問)
★★★:難易度が高く、部分点狙いの設問

【全体の難易度】
高い

・第1問の経営分析で事例企業の財務上の長所短所を分析させ、第2問以降で長所短所を踏まえた提案を行うというこれまでの出題傾向を踏襲した出題です。
・それぞれの設問自体の難易度は決して高くありませんが、記述部分が合計530字あるため、80分で解ききるということを考慮すると、高い難易度であったと思われます。
・経営分析の第1問、一次知識と計算のみで解答可能な第2問(設問1)、第3問(設問1)(a)、第4問でいかに高得点を獲得できるかという、タイムマネジメントが重要な事例だったと思われます。

第1問 経営分析

・第1問は事例企業の短所または長所を3つ取り上げて、その原因を説明する問題です。

①財務指標は財務諸表からではなく、与件文から選ぶこと。

②財務指標の説明ではなく、D社の長所、短所を説明すること。

経営分析は、まずは与件文から解答となりうる財務指標を想定し、その後、財務諸表で数値を確認するというプロセスが鉄則です。

第1問① 長所:売上高総利益率(収益性)

・与件文に以下の記述があります。

第1段落 D社は高い縫製加工技術による自社製品定評を有しており、
第1段落 高品質・高機能が消費者に支持されており、
第1段落 他方で自社ブランドを立ち上げ、

・技術力が高く、消費者の評価が高いということは、他社と同じ原材料を使用していたたとしても、より付加価値を高めることができる、つまり高く売れるため、収益性が高いということです。
・自社製品、自社ブランドの場合、デザイン料等の外注費や発注元の中間マージンといったコストを抑えることができ、収益性の向上に繋がります。
・また、以下の記述があります。
第1段落 その技術力から国内大手のY社より有名ブランド品のOEM生産を受託している
・OEM生産は中間マージンが発生するというデメリットはあるものの、販路開拓が不要になったり、安定受注による売上の向上というメリットがあります。
・以上の記述を検討していくと、D社は技術力が高く、製品の高付加価値化とOEM生産による安定受注により収益性が高いという解答の方向性が導きだされます。
・次に、収益性を表す指標のうち、どの財務指標を選択するかということになりますが、与件文には、D社の販管費や営業外収益、費用上の強みを表す記述はありませんので素直に売上高総利益率を選択しましょう。
最後の確認として同業他社の数値と比較を行います。
D社同業他社
売上高総利益率25.09%20.92%

・財務指標上もD社の方が優れていますので、1つ目の解答は売上高総利益率(長所)で決まりです。

・原因については、D社の強みを意識しながら与件文の記述をまとめていけば問題ありません。

第1問①(解答)
(a)売上高総利益率
(b)25.09%
(c)高い縫製加工技術力や消費者の評価を背景に、自社ブランド製品による高付加価値化やOEM受注による売上拡大を行うことが出来たから。(60字)

第1問② 短所:有形固定資産回転率(効率性)

第1段落 本社を中核都市の駅前に構えており、
第3段落 隣地の中古不動産を買い増ししてきた。
第3段落 本社社屋の一部は老朽化しており、
第4段落 本社を売却した場合、18億円

与件文に不動産の話が出てきたら有形固定資産回転率に問題が無いか疑いましょう。

・身の丈に合わない不動産や有休資産を保有し、効率性が低下しているというパターンが殆んどです。

・第4段落以降で本社社屋を売却するストーリーが展開されていますので、有形固定資産回転率が短所というのが解答の方向性になりそうです。

D社同業他社
有形固定資産回転率2.62回4.53回

・財務諸表をしてみても、同業他社に比べて低い数値になっていますので、2つ目の解答は有形固定資産回転率(短所)です。

・①同様に与件文の記述から原因を解答していきます。

(a)有形固定資産回転率
(b)2.62回
(c)隣地の中古不動産を買い増した本社は、18億円の価値がありながら老朽化による建て替えが必要で、有効に活用されていないから。(59字)

・今回の解答では「有形固定資産回転率」を採用しています。

・効率性の悪さを指摘するだけであれば「固定資産回転率」でも良さそうですが、ここで解答すべきは絶対に「有形固定資産回転率」です。

・「固定資産回転率」だと投資有価証券も含めた数値の比較になってしまいますが、与件文には投資有価証券に関する記述は一切ありません。

・短所として指摘したいのはあくまでも不動産(有形固定資産)への非効率的な投資ですので、指摘したい内容をより明確に表す「有形固定資産回転率」が評価される解答です。

・「固定資産回転率」でも不正解ではありませんが、低評価になっていると思われます。

財務指標を選ぶ際は、D社の強み、弱みとその理由をより明確に表す指標を選択することが重要です。

第1問③ 短所:負債比率(安全性)

・3つ目の指標は少し推測が必要です。

・先に挙げた売上高総利益率、有形固定資産回転率以外に解答となりそうな明確な記述が与件文からは読み取れません。

収益性、効率性の指標を指摘しているので、安全性を指摘するのがセオリーですが、安全性の指標を意識しながら与件文を読むと、以下の記述があります。

第4段落 全額負債の返済に充当する

・第3段落に「中古不動産を買い増した」とありましたので、不動産を取得するために多額の借入をしたのではないか、金利負担による収益性の低下や安全性の低下が引き起こされているため、第4段落で本社を売却して負債を返済するストーリーに繋がっているのではないかという推測ができます。

・この仮説を以って財務諸表を確認すると、長期借入金、営業外費用が同業他社に比べて大きいことが分かります。

D社同業他社
長期借入金1,626百万円1,103百万円
営業外費用208百万円122百万円

・想定できる解答は、①長期借入金の増加による負債比率の上昇(安全性の低下)②営業外費用の増加による売上高経常利益率の低下(収益性の低下)ですが、P/Lを確認すると経常利益は同業他社よりも大きく、借入金が多いということを指摘するという意味では負債比率の方がより適した指標と考えられます

D社同業他社
負債比率291.26%239.54%
売上高経常利益率4.83%1.81%
(a)負債比率
(b)291.26%
(c)不動産取得の為の借入金が過大で、資本構成のバランスが悪く、営業外費用の負担も大きい為、収益性、安全性が低下しているから。

・財務指標を指摘する問題で最も重要なのは、その原因、理由((c)の部分)を与件文の内容に基づいて明確に説明できるかです。

・売上高経常利益率を指摘したとしても、不動産取得のための借入金により、金利負担が重くなり、売上高総利益率の割に売上高経常利益率ベースの収益性が悪化しているということをしっかりと指摘できれば、評価されていると思います。

・資本構成のバランスの悪さを指摘するのであれば、「自己資本比率」でも良さそうですが、前段の有形固定資産回転率同様、ここで指摘するべきは「負債比率」です。

・説明したいのはあくまでも借入金の多さですので、それをより端的に表す「負債比率」の方が高評価に繋がります。

第2問 確率、財務レバレッジ

・設問文の指示は「景気が減速すればー2.5%になる」です。

・9.7%から―2.5%で7.2%になるのではなく、ー2.5%になります。

・7.2%で計算すると第2問の数値を完全に間違えることになり、大きな失点に繋がります。

・分かっていたのに勘違いで間違えるというのは後悔してもしきれません

・先入観で解釈をしないように、よく設問を読みましょう。

(設問1)確率 難易度:★

・設問1は与件文の指示に従って、予測されるROEを求める計算です。

・難易度は決して高くありませんので、落ち着いて取り組めば取れる設問です。

・総資本、負債、自己資本については、与件文で与えられている平成20年度の数値を使います。

前年並みの場合景気が減速した場合
総資本(①)5,0125,012
総資本営業利益率(②)9.7%△2.5%
営業利益(①×②)(③)486.164△125.3
負債(④)3,7313,731
負債の平均資本コスト(⑤)4.9%4.9%
利息(④×⑤)(⑥)182.819182.819
税引前利益(③-⑥)(⑦)303.345△308.119
自己資本(⑧)1,2811,281
自己資本利益率(⑦/⑧×100)23.680・・・△24.053・・・

・生起確率はそれぞれ1/2(50%)ですので、23.680・・・%と△24.053・・・%から解答を求めると△0.186・・・%≒△0.19%が導き出されます。

第2問(設問1)
△0.19%

・計算過程の四捨五入をどうすれば良いかという質問を受けることがあるのですが、私の回答としては、「計算過程の四捨五入はしない。」です。

・設問の要求はあくまでも「計算結果は%で解答し、小数第3位を四捨五入すること。」ですので、計算過程で四捨五入をすることは求められていません。

・計算過程で四捨五入を行うと結論の数値がズレることがあり、捉え方によっては設問要求を満たしていないことになります。

電卓のメモリー機能を駆使して、桁数に収まる限り四捨五入を行わず計算するようにしましょう。

(設問2)財務レバレッジ 難易度:★★★

・設問の内容が非常に分かりづらく取り組みづらい問題です。
・「バラツキ」と言われると標準偏差、確率の問題なのかと思われますが、そうではありません。
・財務レバレッジという一次知識と、経営環境の不確実性が増している状況での社長へのアドバイスという診断士二次試験の意義を考えることができれば、計算無しで解答できます。

財務レバレッジは総資本が自己資本の何倍かを示す指標です。

財務レバレッジの活用によって、ROEにどのような影響が及ぶかを示した公式が財務レバレッジ効果です。

財務レバレッジ効果は一次知識ですが、二次試験でも頻出の論点ですので、しっかりと押さえておきましょう。

ROE=(1-t){ROA+(ROA-i)×D/E}

ROE:自己資本利益率
ROA:総資本営業利益率
t:税金
i:負債利子率
D:負債
E:自己資本
D/E:負債比率

①ROA<i(業績が不調)の時
・負債の利用に伴ってROEが小さくなっていきます。
・負債の利用は有効ではありません。(財務レバレッジがマイナスの方向に作用しています。)

②ROA>i(業績が好調)の時
・負債の利用に伴ってROEが大きくなっていきます。
・負債の利用が有効です。(財務レバレッジがプラスの方向に作用しています。)

・財務レバレッジとは、他人資本(多くは借入金)を梃(レバレッジ)として活用することにより、自己資本のみで投資をするよりもより大きな効果が得られることを言います。

例えば、自己資本1億円の会社の場合、自己資本のみだと1億円の投資しかできませんが、5億円借入金(他人資本)を調達すれば6億円の投資を行うことができます。
・D社は財務レバレッジを活用して本社周辺の不動産を購入することにより、業容を拡大してきていますが、財務レバレッジには当然リスクも付きまといます。
・業績が好調の時(ROAが負債利子率よりも大きい時)は、他人資本の利用が有効に働きますが、業績が不調の時(ROAが負債利子率よりも小さい時)は、負債の利用が足枷になり、かえって業績を悪化させることに繋がってしまいます。
・D社のROAは問題文の指示にある通り、業績が前年並みの場合には9.7%ですが、景気が減速した場合には△2.5%になります。D社の負債利子率は4.9%ですので、ROAが4.9%未満になった場合、財務レバレッジがマイナス方向に作用し、経営に大きなリスクを与えることになります。
・第1問で求めた通り、現状の資本構成のままだと、D社のROEは23.68%になる確率と△24.05%になる確率が半々で、期待値は△0.19%です。
負債比率を低下させれば財務レバレッジの効果(業績のバラツキ)が減少しますが、設問条件によると、本社を売却して得られた18億円を負債の返済に充当することになりますので、負債比率は低下します。
第1問で求めたROEの期待値がマイナスになっていることを前提に、「景気が安定していた時期は、他人資本を活用した(財務レバレッジを活用した)今までの経営方法で良かったが、経済のグローバル化に伴って景気の減速が懸念される現在の環境下では、財務レバレッジがマイナスに作用するリスクが高まっているので、本社を売却した資金を負債の返済に充てることにより、負債比率を減少させ(財務レバレッジの効果を減らし)、業績のバラツキを縮小させましょう。」いう提案をすることが求められている解答の方向性です。
・解説を書いている今、じっくりと与件文や問題文を読めば至るところにヒントがあり、良くできた設問だと思いますが、これを80分という制限時間の中で解ききることは至難の業だと思います。この問題は解けなくてもやむを得ないと思います。
第2問(設問2)
本社を売却し、得られたキャッシュフローを負債の返済に充当することにより、負債比率が低下し景気の変動による税引前自己資本利益率のバラツキが小さくなる為、経営環境の不確実性に対する業績へのリスクは低下する。(101字)

第3問 CVP分析、予想P/L、営業レバレッジ

・設問2の記述は難易度が高いですが、単純な計算である(設問1)、(設問2)(a)は確実に取りたい問題です。

(設問1)CVP分析、予想P/L 難易度:★

・第2問(設問1)同様、与えられた問題文の指示に従って計算を行う問題です。

・時間は掛かりますが、落ち着いて取り組めば取れる問題です。

・CVP分析は二次試験で頻出の論点です。

・出題年度によって、「営業利益ベース」なのか「経常利益ベース」なのか「当期純利益ベース」なのか異なります。

・CVP分析は大半の受験生が対策をしてきていますので落とすと合格がかなり厳しくなります。

問題の指示をよく読んで、確実に正答できるようにしましょう。

平成20年度平成21年度
売上高(①)5,6114,488.8
固定費(②)1,5981,598
販管費(③)931931
営業外損益(④)205205
固定費合計(②+③+④)(⑤)2,7342,734

・ここで、平成20年度の経常利益は271ですので、変動費をXとすると、売上高(①)ー固定費(⑤)ーX=経常利益271となり、変動費:2,606、変動費比率:46.4444…%が求められます。

損益分岐点売上高:固定費/限界利益率(1-変動比率)ですので、2,734/限界利益率:53.555…%=5,105.03・・・(aの解答)が求められます。

・また、売上高が20%減少した場合の経常利益は売上高(①)×変動費比率:46.444…%-固定費(⑤)ですので、4,488.8×46.444・・・%-2,734=△329.978・・・(bの解答)が求められます。

第3問(設問1)
(a)5,105百万円
(b)△330百万円

(設問2) CVP分析、営業レバレッジ 難易度:(a)★、(b)★★★

・(a)に関しては、設問1とほとんど変わりませんので、こちらは確実に取りたいです。

・設問の指示に従って計算をするだけです。但し、各数値の変化は設問ではなく、与件文に記載されています。

損益分岐点売上高=固定費/限界利益率(1-変動費比率)です。

・限界利益率については既に設問1で53.555…%と求められていますので、本社を売却した場合の固定費を求めることができれば正解は導き出せます。

固定費の変動項目変動金額備考
賃料45与件文に記載
管理業務60与件文に記載
販管費△300与件文に記載
営業外費用△144借入金18億×金利8%
合計△339

・本社を売却することより、固定費を339百万円削減することができます。

損益分岐点売上高=固定費:(2,734-339)/限界利益率:53.555・・・%=4.472.03・・・(aの解答)

・(b)に関しては、まずは営業レバレッジが何かを知っていたかということだと思います。

営業レバレッジ(倍)=限界利益/利益(営業利益or経常利益)

営業レバレッジ(倍)=安全余裕率の逆数

・営業レバレッジは第2問の財務レバレッジと比較して考えると分かりやすいです。

・財務レバレッジは、総資本の内、負債の割合を示した指標で、大きくなれば大きくなるほど、ROAの変動がROEに与える影響が大きくなる、つまりハイリスクハイリターンになりました。

・営業レバレッジは、総費用の内、固定費の割合を示した指標で、大きくなれば大きくなるほど、売上高の変動が利益に与える影響が大きくなる、つまりハイリスクハイリターンになります。・財務レバレッジは総資本というカテゴリーの中で、負債を梃(レバレッジ)にすることにより、より大きな効果を得ようとするもので、営業レバレッジは総費用というカテゴリーの中で、固定費を梃(レバレッジ)にすることにより、より大きな効果を得ようとするものです。財務レバレッジ、営業レバレッジどちらにも共通して言えるのは、「数値が高ければ高いほど、よりハイリスクハイリターンになる。」ということです。

・第3問の設問1で求めた通り、D社は固定費負担が重く、売上高が減少すると、経常利益がマイナスになるというリスクがあります。その可能性は1/2(50%)です。

・第3問の設問2(a)で求めた通り、本社を売却して固定費負担を減少させれば、損益分岐点売上高は4,472.03百万円まで低下し、利益を生み出しやすくなります。

・また、固定費を339百万円削減することにより、経常利益が9百万円の黒字になります(設問1(b):△330百万円+固定費削減額:339百万円)。

第3問も第2問と同様に、設問1で想定される数値をシュミレーションした上で、「(財務体質と費用体質で論点は違うにせよ、)50%の確率で赤字になるようなハイリスクハイリターンな経営は止めて、安定した経営を目指しましょう。」と社長に提案することが求められています。

・経常利益が黒字に転換する数値を与えていることも含め、とても考え抜かれた問題です。美しさすら感じます。が、試験当日に出題者の意図をここまで汲み取れた受験生は殆どいないと思います。

・この後解説する第4問もそうなのですが、平成21年度事例4のテーマは一貫してリスクヘッジでした。第2問、第3問はレバレッジを抑えることにより、第4問はオプション取引を活用することにより、リスクヘッジを提案することが求められています。

実は、この試験の前年(平成20年)にリーマンショックが発生しています。
リーマンショックの余波は大企業だけではなく、中小企業にも及びました。
レバレッジの負の作用によって経営が破綻する中小企業も多数発生しており、そういった時代背景を意識した出題だったのだと思われます。

・事例全体を通じて一貫して流れるリスクヘッジの意識、レバレッジというキーワードから推測すれば営業レバレッジというキーワードを知らなくても、「固定費を減らして安定した経営を目指しましょう。」ということを解答できたかも知れませんが…かなり厳しいですね。(b)に関しては、取れなくてもやむを得ないと思います。

第3問(設問2)
(a)4,472百万円
(b)本社を売却することにより固定費が削減され、営業レバレッジは低下する。営業レバレッジの低下と固定費削減による損益分岐点売上高の低下により、売上高が20%減少したとしても、黒字の経常利益を見込むことができる。

第4問 為替損益、オプション取引

・第4問は為替損益とオプション取引に関する出題でした。

・一次知識で対応可能で、解答文字数も多くありませんので、確実に取りたい設問です。

(設問1) 難易度:★

・為替予約の問題は感覚的に掴みづらく、苦手にする受験生も多いのですが、「商品を売ってドルを売り、ドルを買って商品を買う」の意識を持つと分かり易くなります。

・海外取引を行う場合にはドルで取引を行うことが前提になります。

①輸出の場合
「商品を売ってドルを売る」
・海外に輸出を行う場合、その代金はドルで支払われます。
・ドルを持っていても日本国内で取引はできませんので、受け取ったドルを銀行に売り、円に換える必要があります。

②輸入の場合
「ドルを買って商品を買う」
・海外から輸入を行う場合、その代金はドルで支払います。
・手元にドルがありませんので、銀行からドルを買って、代金支払いに充てる必要があります。

・輸入はコール、輸出はプットと機械的に覚える方法もありますが、理屈で覚えないと忘れてしまいますので、上のポイントをよく意識してください。

・このポイントを踏まえて設問1を確認します。

・D社は輸出企業ですので、「商品を売って、ドルを売ります。」

・500万ドル分の商品を売って、500万ドルを売る約束をしています。その際の為替レートは1ドル100円です。

・ところが、商品が430万ドルしか売れませんでしたので、手元には430万ドルしかありません。

不足分の70万ドルをどうするか。

現在のレート(スポットレート:1ドルあたり102円)でドル70万ドル分買って1ドルあたり100円で売る必要があります。

・この2円×70万ドルが損失ということになります。

第4問(設問1)
△140万ドル

(設問2) 難易度:★

・一次知識ですが、オプションの理解やメリット、デメリットを問う問題は事例4でも頻出ですので、確実に押さえておきましょう。

コールオプション:一定の金額で購入する権利

プットオプション:一定の金額で売却する権利(putから押し付ける=売りつけるイメージです。)

・オプションの買い手のメリット、デメリット
※オプションの売り手=銀行ですので、基本的にはオプションの買い手のメリット、デメリットを押さえておけば問題ありません。

メリット:①権利の行使、放棄を選択することができる。②為替差損を一定金額で抑えることができる。

デメリット:オプションを行使したとしても、放棄したとしても、一定の支出(オプション料)が発生する。

・どのようなオプション取引を用いるか問われた場合には、以下の4点を盛り込むと漏れの無い解答になります。

①プットオプションなのか、コールオプションなのか

②オプションの権利行使価格はいくらか

③オプションのタイプは何か

④オプションの決済日はいつか

・オプション取引には、①満期日までであればいつでもオプションを行使できるアメリカンタイプと②満期日にしか権利行使できないヨーロピアンタイプがあります。

・いつでも権利行使できる分、使い勝手はアメリカンタイプの方が良いですが、その分オプション料が高くなります。

・今まで診断士試験で出題されたのは全て、本問のように「決済時点での為替リスクを回避する」という前提の問題であるため、予め行使するタイミングが決まっているヨーロピアンタイプを解答させる問題でした。

アメリカンタイプ、ヨーロピアンタイプの他に、週に1回、月に1回というように決済できるタイミングが複数あるバミューダンタイプというタイプが存在します。二次試験で出題されることはないと思いますが、一次試験対策としては覚えておいても損は無いと思います。
第4問(設問2)
(a)決済日を満期日とするヨーロピアンタイプ、1米ドルあたり100円のプットオプションを購入すべきである。(47字)
(b)長所は、為替相場に応じてオプションの行使または放棄を選択することにより、為替差損を一定額に抑えつつ為替差益を得られることである。短所は、権利の行使、放棄に係わらず一定のオプション料が発生することである。(100字)
以上、参考になれば幸いです。

※二次試験対策目次(目次順に読み進めて頂くことで、学習効果がより高まります。)

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