平成30年度事例3再現答案

【事例4】平成30年度 こんなにボロボロでも59点!? 再現答案(模範解答・解説付)

今回は私が受験した平成30年度二次試験事例4の再現答案を掲載させて頂きます。

他の事例についても再現答案を掲載していますが、事例4に関しては、他の事例と掲載した目的が異なります。

事例1~事例3の再現答案を掲載した目的は主に以下の4点です。

①本番当日どのような思考プロセスで解いたかお伝えするため。

②本番当日どのような時間配分をしたかお伝えするため。

③合格するためには、80分でどの程度の答案を作り上げれば良いか体感していただくため。

④再現答案がどの程度の評価(得点)を得られているか知っていただくため。

今回事例4の再現答案を掲載するのは、計算が出来なくても、諦めずに取るべきところを取れば合格は勝ち取れるということを知って頂くためです。

試験当日の感想

・事例4が終わった瞬間、「これは駄目だ…」と思いました。

・事例1~事例3はそれなりに手応えがあったのですが、事例4で足切り(40点未満)になる可能性が高いと思っていました。

・手応えは全くありませんでした。

 

取り組みづらい問題ではあった

・受験生や各予備校の講評等を見ていると、平成30年度の事例4は取り組みづらく、多くの受験生が戸惑っていたようです。

・取り組みづらさの理由は以下の2点です。

①出題傾向の変化

・平成30年度事例4では、WACCや定率成長モデルといった、それまでは一次試験でのみ問われていた分野が問われました。

・私はストレート合格でしたので、一次知識が残っていましたが、多年度受験の方のように二次試験対策を中心に1年間学習していた方にとっては対応が難しかったと思われます。

事例2もそうですが、近年の二次試験では一次知識を問う出題が増えています。
対応が難しくなりますが、一次知識まで学習範囲を広げて対策を行う必要性が高まっています。

 

②設問要求が分かりづらい

・ここ5年くらいの傾向ですが、設問をどう捉えれば良いのか。ということが分かりづらくなっています。

・「前後の設問や一般的な財務に関する知識から設問要求を推測することも診断士として重要な能力」と言われてしまうとぐうの音も出ませんが、国家資格の問題としてはやや不適切なのではないかと思います。

・平成30年もご多分に漏れずそういった出題がありました。

平成30年度事例4再現答案

・前置きが長くなりましたが、本題に入りましょう。

・間違いも多く、私の再現答案だけでは学習の手助けにはなりませんので、参考に予備校の模範解答を掲載しています。

予備校の解答はLEC、TAC、資格の大原の3社の内容を比較検討し、掲載しています。

・今回の記事はメンタル面での準備という側面が強いので、私の心の声(?)も合わせてコメントしていきます。

 

第1問(配点24点)

(設問1)
D社と同業他社の財務諸表を用いて経営分析を行い、同業他社と比較してD社が優れていると考えられる財務指標を1つ、D社の課題を示すと考えられる財務指標を2つ取り上げ、それぞれについて、名称を(a)欄に、その値を(b)欄に記入せよ。なお、優れていると考えられる指標を①の欄に、課題を示すと考えられる指標を②、③の欄に記入し、(b)欄の値については、小数点第3位を四捨五入し、単位をカッコ内に明記すること。

解答欄の指定
・優れている指標を①、課題を②、③です。
・順番を間違えてしまうと最低でも2問落とすことになり、致命的なミスになります。
・全て課題を指摘させたり、年度によって優れている指標と課題の順番が違ったりしますので、気を付けましょう。
四捨五入、単位
・あり得ないと思われるかもしれませんが、本番の緊張感と疲労の中では間違えてしまうことがあり得ます。
・丸で囲ったり、線を引いたりして絶対に間違えないようにしましょう。

設問1の解答

・財務指標分析は与件文から読み解くというのが鉄則なのですが、平成30年度の事例では、それらしい文章があまり出てきません。

「業務委託をしている」という状況から、販管費が高く営業利益率に課題がありそうだということ、「今後、自社の支店・営業所を拡大予定」ということから、拡大する体力はあるのだろうということで、売上高営業利益率自己資本比率の2つはすぐにあたりを付けられたのですが、それ以外に根拠を以って指摘できそうなものがありません。

・やむを得ず財務諸表を確認し、他社と比べて極端に多い有形固定資産を課題として指摘することにしました。

私の解答各予備校の解答一致
①自己資本比率(35.59%)①自己資本比率(35.59%)
②売上高営業利益率(1.20%)②売上高営業利益率(1.20%)
③有形固定資産回転率(17.08回)③有形固定資産回転率(17.08回)

 

(設問2)
D社の財務状態および経営成績について、同業他社と比較してD社が優れている点とD社の課題を50字以内で述べよ。

設問2の解答

【私の解答】
安全性は高いが、外注費等により収益性が低下し、経営資本を有効活用できていないことが課題である。(47文字)
【各予備校解答との一致】

・強み、弱みが与件文から読み取りづらく、文字数も50字と少ないため、指標の説明になってしまいました…。

二次試験では一般論は評価されませんので、あまり点数が取れていないのではないかと思われます。

財務指標分析は論述も含めて注力して対策していましたので、本番でも確実に取るつもりでいました。与件文から明確な根拠が読み取れず、論述も一般論になってしまい、この段階でかなり不安を抱きました。

 

第2問(配点31点)

D社は今年度の初めにF社を吸収合併し、インテリアのトータルサポート事業のサービスを拡充した。今年度の実績から、この吸収合併の効果を評価することになった。以下の設問に答えよ。なお、利益に対する税率は30%である。

税率
・繰り返しになりますが、本番ではあり得ないミスをすることがあります。
税率は40%で出題されている年度もありますので、しっかりとチェックしておきましょう。

(設問1)
吸収合併によってD社が取得したF社の資産および負債は次のとおりであった。
(表は省略)
今年度の財務諸表をもとに①加重平均資本コスト(WACC)と、②吸収合併により増加した資産に対して要求されるキャッシュフロー(単位:百万円)を求め、その値を(a)欄に、計算過程を(b)欄に記入せよ。なお、株主資本に対する資本コストは8%、負債に対する資本コストは1%とする。また、(a)欄の値については小数点第3位を四捨五入すること。

設問1の解答

私の解答各予備校の解答一致
①8%×179/503+1%×324/503*(1-0.3)=3.297…≒3.30(%)①8%×179/503+1%×324/503*(1-0.3)=3.297…≒3.30(%)
②CF/3.30%=(190-138)、CF=1.716≒1.72(百万円)②CF/3.30%=190、CF=6.27(百万円)×

②に関しては、問題文の「増加した資産」をなぜか純資産と勝手に読み替えてしまい、完全に間違えましたこれが設問2の間違いにも繋がります…。

(設問2)
インテリアのトータルサポート事業のうち、吸収合併により拡充されたサービスの営業損益に関する現金支出と非資金費用は次のとおりであった。
(表は省略)
企業価値の増減を示すために、吸収合併により増加したキャッシュフロー(単位:百万円)を求め、その値を(a)欄に、計算過程を(b)欄に記入せよ。(a)欄の値については小数点第3位を四捨五入すること。また、吸収合併によるインテリアのトータルサポート事業のサービス拡充が企業価値の向上につながったかについて、(設問1)で求めた値も用いて理由を示して(c)欄に70字以内で述べよ。なお、運転資本の増減は考慮しない。

設問2の解答

私の解答各予備校の解答一致
(1-30%)×(400-395-1)+1=3.80(百万円)(1-30%)×(400-395-1)+1=3.80(百万円)
設問2(c)
【私の解答】
・間違っているので詳細は省略しますが、先ほど求めた要求CF1.72百万円と比較して3.80百万円CFが増加しているから企業価値は向上したという内容を記載しました。
正しくは、要求CF6.27百万円と比較して3.80百万円しかCFが増加してないから企業価値は向上していないという内容です。
【各予備校解答との一致】
×
過去問のパターンだと、会社買収や投資効果を問われる問題は、「事例企業にとってメリットがあった。(だから継続しよう)」というポジティブな方向性の解答が多く、先入観でポジティブな解答で問題無いだろうと判断してしまいました。
計算も自信を持って解答出来ている訳ではありませんでした。
過去問には無い出題や、第1問のことがあったりして、いよいよ焦り出しました。

(設問3)
(設問2)で求めたキャッシュフローが将来にわたって一定率で成長するものとする。その場合、キャッシュフローの現在価値合計が吸収合併により増加した資産の金額に一致するのは、キャッシュフローが毎年度何パーセント成長するときか。キャッシュフローの成長率を(a)欄に、計算過程を(b)欄に記入せよ。なお、(a)欄の成長率については小数点第3位を四捨五入すること。

設問3の解答

私の解答各予備校の解答一致
(a)32.93%(a)1.27%×
(b)成長率をgとする。3.8/(3.3%-g)=52

g=32.926…≒32.93%

(b)成長率をgとする。{3.8×(1+g)}/(3.3%-g)=190

g=0.01274…≒1.27(%)

×

・定率成長モデルというところまでは理解していましたが、キャッシュフローは3.8(百万円)ではなく、成長後の数字(3.8×(1+g))を使わないと駄目でした。(そもそも設問2の数字が間違っているので正答は出来ませんでしたが…。)

第3問(配点30点)

D社は営業拠点として、地方別に計3カ所の支店または営業所を中核となる大都市に開設している。広域にビジネスを展開している多くの顧客企業による業務委託の要望に応えるために、D社はこれまで営業拠点がない地方に営業所を1カ所新たに開設する予定である。
今年度の売上原価と販売費及び一般管理費の内訳は次のとおりである。以下の設問に答えよ。
(表は省略)

 

(設問1)
来年度は外注費が7%上昇すると予想される。また、営業所の開設により売上高が550百万円、固定費が34百万円増加すると予測される。その他の事項に関しては、今年度と同様であるとする。
予測される以下の数値を求め、その値を(a)欄に、計算過程を(b)欄に記入せよ。
①変動比率(小数点第3位を四捨五入すること)
②営業利益(百万円未満を四捨五入すること)

設問1の解答

この問題は変動費に関する設問の読み取りが難しく、各予備校でも解答が分かれています。
私の解答各予備校の解答一致
①(782×7%+1,047)/(1,503+550)=53.664・・・≒53.66(%)①(782×1.07+232+33)/1,503×100=73.302…≒73.30(%)×
②売上高:1,503+550=2,053
変動費:2,053×53.66%=1,101.6398
固定費:438+34=472
営業利益:2,053-1,101.6398-472=479.3602≒479(百万円)
②売上高:1,503+550=2,053
変動費:2,053×73.30%=1,504.849
固定費:438+34=472
営業利益:2,053-1,504.849-472=76.151≒76(百万円)
×
なぜこんなことになってしまったのか

・売上高が増加すれば変動費額が増加するのは当然です。

・売上高550百万円の増加に比べて、変動費の増加が外注費増加分54.74百万円だけというの少なすぎです。

・営業所を開設しただけで営業利益がいきなり26倍になるのはおかしいですし、そもそもこの解答だと問題として簡単すぎます。

試験中もおかしいなと感じていたのですが、

①問題文中に「その他の事項に関しては、今年度と同様」とあり、外注費以外の変動費額は変わらないと読み取れなくもないこと。

②平成29年度事例4第2問で「その他の事項に関しては、当年度と同様」と記載があり、この時は文字通り当年度と変わらない数字が正解だったこと。

③平成28年度事例4第4問のように、その他変動費が変わる場合は、その内訳が明記されていたこと。

④平成22年度事例4第2問のように、売上高に応じて変動費が変わる場合は「その原価構造は現状と変化がない」と、変動比率は変わらないということが示唆されていたこと。

などがごっちゃになって、あえてそのままにしました。

今、冷静になって考えれば明らかにおかしいですが、試験中は、
「出題形式が少し変わったから、きっと難易度調整のためのラッキー問題だ!」
と本気で思っていました。
笑い話のようですが、試験中は本気でそう思ってしまうくらい、疲弊していますし、余裕がありません。
(設問2)
D社が新たに営業拠点を開設する際の固定資産への投資規模と費用構造の特徴について、60字以内で説明せよ。

設問2の解答

【私の解答】
固定資産への投資規模は相対的に小さい。売上高の上昇に比べ変動費の増加が少ないため、費用構造は固定費が相対的に小さくなる。(60字)
【各予備校の解答(概要)】
①固定資産への投資規模は小さい。②変動費の増加が多いので固定費の割合が小さくなる。
【各予備校解答との一致】
×
変動費の増加が少ないのに、固定費が相対的に小さくなるというロジックが全く分かりませんね…。
(設問3)
(設問2)の特徴を有する営業拠点の開設がD社の成長性に及ぼす当面の影響、および営業拠点のさらなる開設と成長性の将来的な見通しについて、60字以内で説明せよ。

設問3の解答

【私の解答】
営業拠点の開設により、営業レバレッジは約25倍から約2倍に変化する。開設を続けると、売上高に対する営業利益は減少していく。(60字)
【予備校の解答(概要)】
①当面は売上、利益が増加、②将来的には利益率が低下していく。
【各予備校の解答との一致】
なぜ営業レバレッジを持ち出したかは記憶にありませんが、半分くらいは(?)合っていそうです。

第4問(配点15点)

D社が受注したサポート業務にあたる際に業務委託を行うことについて、同社の事業展開や業績に悪影響を及ぼす可能性があるのはどのような場合か。また、それを防ぐにはどのような方策が考えられるか。70字以内で説明せよ。

第4問の解答

【私の解答】
協力個人事業主等が、D社の求めるサービス水準に達していない場合に悪影響を及ぼす可能性がある。方策は、協力個人事業主等の確保・育成の強化である。(70字)
【各予備校の解答との一致】
与件文からの抜き出しで対応できる問題だったので、ここだけは確実に取ろうと思っていました。今思うとこれがラッキー問題だったんですね…。

まとめ

私の再現答案と、各予備校の解答を比較すると以下の通りです。

設問問題の種類一致
第1問(配点24点)
設問1 ①計算
設問1 ②計算
設問1 ③計算
設問2論述
第2問(配点31点)
設問1 ①計算
設問1 ②計算×
設問2(a)(b)計算
設問2(c)記述×
設問3(a)(b)計算×
第3問(配点30点)
設問1 ①計算×
設問1 ②計算×
設問2記述×
設問3記述
第4問(配点15点)記述

いかがですか…?

第3問(配点30点)はほぼ落としています。

第2問(配点31点)も半分以上間違っています。

その他の問題も100%の解答では無いと思います。

それでも59点です。

・こんな出来でしたが、開示請求の結果は59点(B判定)でした。

・あと1点でA判定(60点以上)です。

・(これについては後日別記事を書きますが、)確実に得点調整をしていると思います。

 

第1問と第4問を取れたことが大きかった

個人的には、第1問と第4問を取れたことが大きかったと思います。
・他の合格者に聞いても、事例4が取れいている自信があったという方は誰もいませんでしたが、第1問と第4問だけは全員出来ていましたし、「ここだけは絶対取ろうと思った。」と言っていました。
・どんな問題が出題されたとしても「他の受験生も取れるであろうこの問題だけは絶対にとろう」という現場対応力、それを確実に正答できる実力。それが出来るだけの努力をした人こそが合格を勝ち取れます。
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