二次 強みは容易に手に入れられないものを選ぶこと

《テクニック》強みは容易に手に入れられないものを選ぶこと

強みは容易に手に入れられないものを選ぶこと

二次試験の基本的な解答の方向性は事例企業の強みを活かして、機会を掴み、脅威を回避する提案を行うことです。

事例企業の強みは一つでは無く、与件文から複数読み取れることが多く、どの強みを骨子に解答するかによって、評価が変わります。

全ての強みを盛り込むという方法も考えられますが、字数制限の関係で解答すべき強みの説明が薄れ、低評価になる可能性が高いです。

どうしたらより高い評価を得られる強みを選ぶことができるのか。

今回は、平成18年度事例2を参考に、評価される強みの選び方について解説してきます。

平成18年度事例2

平成18年度事例2はテニススクールの事例です。

概略は以下の通りですが、全文を確認されたい方はこちら(AASホームページ)から確認してください。

【平成18年度事例2 概要】
・B社はテニススクールを営む企業です。
・全国に7カ所の事業所があり、特徴的なのは、全ての事業所が最寄駅から徒歩5分圏内に立地し、3面の屋内コートを有していることです。
・インストラターの多くはトーナメントや大会にも出場する選手です。
・アルバイトは大学生中心で難関大学に通う学生が多く所属しています。
・それぞれの顧客のレベルに合わせた指導を行っており、ジュニアクラスもあります。
・出張や転勤の際、他の事業所でレッスンを受けられるサービスを提供しています。
・B社の料金は他のテニススクールよりも高めに設定されています。
・インストラクターが中心になって定期的にイベントを開催し、生徒と親睦を深めています。
・プロモーションは、新聞の折り込みチラシと口コミ中心です。
・各事業所には託児所やミーティングルーム、自習室が用意されており、休憩中に自習室で大学生アルバイトに勉強を教えてもらう生徒もいます。
・最近、テニススクールの新規会員獲得が伸び悩んでおり、B社は新規事業として学習塾を始めようと考え中小企業診断士に相談をしました。

【設問】
第1問 B社の競合他社との差別化のポイント
第2問 サービス業における需要変動の吸収方法
第3問 B社の有形資源、無形資源の分析
第4問 学習塾を行う際の、B社の差別化戦略
第5問 学習塾以外に考えらえるB社の新規事業

第1問、第2問については与件文から素直に抜き出せばよく、解答のバラつきが少なかったと思います。
第5問については与件文に好立地、託児所というキーワードがあるので、「託児所事業を実施して、母親や子供をテニススクールの生徒として囲い込む。」というような解答を想起しやすく、ここでもあまり差が付かなかったと思います。
平成18年度事例2で差が付いたのは第4問と第4問との一貫性を確保した第3問の解答ができたかです。
第4問
B社が新規事業として学習塾を行う場合、どのような差別化戦略が考えられるか。そのポイントを30字以内で3つあげよ。
一度与件文を読んだだけだと、恐らく多くの方が以下のような解答の方向性を考えると思います。
①最寄駅から徒歩5分以内の好立地に事業所がある。→利便性が高い
②難関大学のアルバイトを講師として雇える。
③子供たちのレベルに合わせた指導ノウハウがある。
ですが、これらの解答の評価は高くありません。
なぜでしょうか?
他社でも容易に真似ることができるからです。
①の立地については、更に便利なところに学習塾を開設すれば良いですし、
②についてもより高い時給を払って雇えば良いだけです。
③については、①、②よりは難しそうですが、競合他社でも提供可能な内容です。

VRIO分析

ここで、一次試験知識のVRIO分析を思い出しましょう。
VRIO分析は、V:価値があるか、R:希少性があるか、I:模倣困難性は高いか、O:組織化されているかの観点で、企業の経営資源が強みや弱みかを判断するフレームワークです。
二次試験対策において重要なのは、I:模倣困難性は高いかです。
V:価値があるか、R:希少性があるかについては多くの方が意識していますが、I:模倣困難性は高いかについては、意識できていないことが多いです。
与件文を一読しただけでは気付かないことが多く、分かりやすい強みが先入観となり、それを骨子に解答を組み立ててしまい低評価になってしまうということがよくあります。
容易に他社が真似できるのであれば、その経営資源は一時的な強みにしかなりません。
言い換えれば、事例企業にしかないもの、事例企業にしかできないこと(コアコンピタンス)を骨子に解答を作ることが重要です。
今回の例で言えば、以下のような解答の方向性が評価される内容です。
①テニススクールと連動した割引制度を導入して顧客を囲い込む
②イベントを通じた生徒との絆作りのノウハウを活用し関係性を深める
③親のテニススクールと子供の塾を同じ場所で行える利便性を訴求する
解答の一貫性という意味で、第3問は第4問の解答に繋がるような経営資源を解答する必要があります。
因みに、ノウハウを始めとする無形資源は模倣困難性が高いことが多く、高評価に繋がる強みになりうる可能性が高いです。
いかがでしょうか。
先ほどの解答に比べると、B社にしかできないことという側面がより強まったのではないでしょうか。

最も手に入れるのが難しいものは何かという視点

この解答の方向性を踏まえて再度与件文を読み直すと、この解答に至るヒントが示唆されていることに気付くと思います。
「言われてみれば確かにそうかも知れない。」という内容かもしれませんが、二次試験に合格するためには、80分間という限られた時間の中で、ここに行き着く必要があります。
与件文からは事例企業の強みが複数読み取れます。
その中でどの強みを骨子に解答を作っていくか、迷った時は「最も手に入れるのが難しいものは何か」という視点で与件文を分析することが大切です。
分かりやすい強みに安易に飛びつくのではなく、「この強みは事例企業にしかないものか」「競合他社が容易に真似できないものか」「自社が気付いていない本当の強みがあるのではないか」という自問自答を繰り返し、より評価される解答を作り上げましょう。

以上、参考になれば幸いです。

※二次試験対策目次(目次順に読み進めて頂くことで、学習効果がより高まります。)

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